美術館では、地元の絵画愛好家たちによる作品の出品会も催されていた、
棟方志功氏や木下晋氏の絵画や版画が展示されている二階の室とは別の、一階のフロアーに面した部屋にそれらの作品は飾られていた、
部屋の入り口に机が一つ、椅子が一脚、その椅子に中年の男性が座り、受付のような役、
「観ていきませんか、無料ですよ」、前を通るとそう声をかけられた、
無料という言葉に釣られ、入ってしまった、
アマチュア?の絵画愛好家集団の作品は、思っていた以上に大作が(大きな絵という意味)多く、まずそのことに驚いた、
縦1.5m、横4mもの横長の作品を描く、それを載せるための台を、置く場所を我が家では持ち得ない、
家のどこか一隅に、それだけの作品を描きうる場所がある、そのことに思いが至り驚いたのだ、
これほど大きな作品を描ける、描きながら生活し、そして困らない・・・、
お金持ちーーっ、大向こうから声が飛びそう、
16人会というらしいその絵画集団、その中の一群の作品に目を惹かれた、
景色であったり、少女であったり、対象はいろいろなのだが、色遣いがパステル調で眼に優しい、
人物像は少女一人であったり少女数人であったり、いろいろあるのだが、そこに描かれた少女の眼がどれも皆同じで同じ顔で笑っているように見える、
眉毛と同じに垂れ下がった眼ばかり、そこに工夫がないというのか、逆にわかりやすくて面白いというのか、ぼくには心地よく思えたのだけれど、プロの画家からみたらたぶん不評なのだろうなあ、そんな絵だった、
その絵を見ていると、後ろから声をかけられた、
「その絵、私が描いたんですの」、見ると一人の女性が、、、
「私、今年、75歳になるんですけど、家の者からは絵が大きいからって邪魔扱いにされて・・、」
「これは、ドイツへ行ったときのライン川を描いたもの、ほら絵の後方に建物があるでしょ?あれ、お城なの、名前は・・、なんて言ったかしら、息子から教わったのだけれど・・、あらイヤだ度忘れしちゃって」
「これはオーストリアで出会った少女、可愛い?そうですか、そう言っていただけると嬉しいわ、目が笑っている?私、こういう目しか描けないのよ、皆同じ顔だねって先生(絵の)からいつも笑われてしまうの、気をつけないといけないわって思っていても、いざ筆を握ると・・」
「家にはこの何倍も絵がありますわ、とても好きな絵?あら、そうかしら、嬉しいわあ、まさかこんなおばあちゃんが描いているなんて思わなかったでしょ、えっ女子大生が描いているかと思ったですって?まあいやだ、恥ずかしいわ、何年練習してもこんな絵しか描けないんですもの、、、」
少女の絵がとても気に入ってできれば家に飾りたいと正直に告げた、それに応えてまた会話が何度かやりとりされた、まだまだ会話が続きそうな老画家に感謝の意を告げ部屋を出た、、、
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