「1991年から96年にかけてアダルト・ビデオの世界で息をしていた少女たちへのインタビュー集。
昨日のことのようで遠い昔のあの頃。一人の女の子が傷つき苦しみながらようやく辿り着いた場所。それがAV。・・・・・・。」カバー裏 解説 大月隆寛
この本に、アハーン、ウフーンのアノ場面を期待すると、それは大いに裏切られることだろう、
「AV」という文字がタイトルにあるからといっても、性的興奮をさらに昂進させるような画像も文章も一切でてこない、
ひたすら実直に、真面目に誠実に、淡々と、対象である少女たちの実像に迫るインタビュー集なのだ、
能弁でない著者は、少女たちの「語り」が途絶えると、ただ黙り、近くにおいてある薄い酒を啜りながらひたすらその再開を待つ、、
「困りましたよ。ほんとに何もしゃべんないんだもの。だから、もういいや、と思って、その時書いた原稿は全部その彼女の沈黙の部分はずーっとテンテンテン(笑)」
いま思えば、ぼくは、この本に興味があったというよりも、むしろこの著者に興味が湧き
関心の度合を深めたのからこそ、この本を手に取ったのかもしれない、
同じ著者の前作「風俗の人たち」(ちくま文庫)を読んで、彼の奥底にある優しさに触れたような気がして、この人、こんなスゴイことを書きながら、文章がケバクないなあと、そんな感想をもったからだ、
性風俗の一端から全体像にまで至る膨大な数の取材取材取材、
テレクラ、SMクラブ、本番ストリップ、女装、ロリコン、ダッチワイフ、ニューハーフ,レズバー、ゲイバー、ピンク映画、ピンサロなどなどなど、、
ここに書ききれないほどの量をサバキながら、彼ら彼女らといつも目線は同視線にあり、決して上から見下ろしたりへりくだってイヤ味な文を書いていない彼の文章のスタイルに共感にちかいものを感じたからだ、
フリーの編集者である向井徹から「AV女優インタビューを本にまとめたい」と言われ、永沢氏は驚く、
「私は驚いた。そんなこと、考えたこともなかった。私は呆れてしばし向井の顔を見、そして、そんなことはよした方がいい、と言った。私も一応、元編集者である。そのくらいの勘は働く。今、いかに単行本が売れない時代であるか、その時代にあって、AV女優インタビュー集などという地味な本が売れるわけがない、悪いことは言わないからもっと違う企画を考えた方がいい」と、永沢氏は固辞する、が、結局、本は出版される、
本が発売されてから1週間後、永沢が住むアパートの郵便受けに一枚の葉書が届く、
「文藝春秋 出版局 今村敦」からだった、
「前略
突然このような葉書を書かせていただきます失礼、お許しください。御著「AV女優」、さっそく購入し、拝読させていただきました。たいへん興味深く一人一人がいとおしく、愛らしく、時々痛々しく・・・・・・とても魅力的に描かれていることに感じ入りました。いますぐ何かお仕事という訳ではないのですが、一度お目にかかれたらと思っております。近々ご連絡させていただきます。
草々」
ビレッジセンター出版局から単行本で発行された「AV女優」が、文藝春秋社から文春文庫として発売されるきっかけとなった、その発端の始まりだった、、
ちなみに、ぼくの手元にあるものも25mmを超える分厚い文庫本なのだが、
ここで多くを語ることはできない、
これから読む人々の興を削ぐことになるだろうし、そもそもアホな頭では伝えることができない、
詳しくは是非とも、本書を手に取り読んでほしい、
P639から綴られた、今村敦を偲ぶ永沢光雄氏の文章が圧巻です、
泣けてきます、、
永沢光雄 36歳。昨年の年収300万。奥さんは新宿二丁目の焼き鳥屋で働いている。(当時)
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