2012年12月18日火曜日

次郎物語






熊本の中学の担任だった草野先生から、以前在籍していた東京の中学に再転校するときに、クラスでお前に何か贈りたいそうだ何がいい、と言われた、

ぼくが希望したのは、当時新潮文庫から出ていた「次郎物語」全5部だった、

次郎物語の第1部は自分で買い読んでいたのだが、幼年少年時代の次郎が上級に進級し、さらに進学し青年になっていく、その行く末も見てみたいと思っていた、
先生からの申し出を受け止め有り難く頂戴した、

東京へ向かう汽車の中で読み始め、あっという間に読了してしまった「次郎物語」、
当時、熊本から東京へは霧島という準急の汽車が走り、乗車賃は格段に安いものの、片道29時間かかった(祖母の家から東京の家まで、玄関から玄関まで)記憶がある、
なので大概の本は車中にて読めてしまう、、

ここでいつか書いたように、アップルコンピューターから出ている携帯型端末機iPodTouchを最近購入した、
家のWi-Fi機能を使えばネットに接続できるし、ネットにつながるのだから世界は拡がっていく、

自宅のPCとつなぎ、動画や画像、映画、文章を入れ、さまざまなアプリケーションを導入して楽しんでいる、
bReaderというアプリは、ネット上の「青空文庫」から版権の切れた小説をダウンロードし持ち歩き読むことに特化したソフト、

夏目漱石芥川龍之介森鴎外などなどの明治の文豪たちから、石川啄木樋口一葉などなど、出版されて50年以上経ち版権を失った作品が無料で展示され無料でダウンロードすることができる、

作家別索引の「し」のところに、下村湖人があった、
「次郎物語」を全巻ダウンロードすることができた、

今、ぼくのiPodTouchにはさまざまな作家のさまざまな作品が収納されている、
バスを待つ間、料理を注文し出てくるまでの間、地下鉄の中、空いている時間にそれらを取り出し読むことができる、
無駄な時間などありはしない、それが嬉しい、、

次郎物語の主役はもちろん次郎なのだが、次郎の父、母、乳母、兄、弟、父方の祖父祖母、母方の祖父祖母など、次郎をとりまくたくさんの人物が登場する、

初めて読んだときに、ぼくと次郎と、これほど似ている人物がいるのかと不思議に思えたくらいに次郎への感情移入が激しかった、
良い小説というのはそれを読んだ読者すべてに、これは私の話だ、これって俺のこと?、と思わせるのだとか、その伝でいけば、次郎物語も小説として十分成功している、

母から引き離されて乳母の元で育てられた次郎、実家に帰っても、母や兄弟、祖母ともうまく折り合えない次郎、その次郎を暖かく見守る父親、

教育小説の様相を帯びながら、現に、後巻になればなるほど教育的訓導的匂いが漂ってくるのだが、第1部に限っていえば、説教じみてはいない、

少年だから純粋であるとか、清純な精神の持ち主であるだとかの、画一的な薄っぺらい表面的な取り上げ方にアンチテーゼを投げかけるこの「物語」は、出版当時、こんな子どもが現にいるのかと拒絶する意見の方が多かったのだとか、次郎は変質者だね、とする意見まであったとか、、

凡百の少年少女小説と一線も二線も劃すこの小説を、読まれていない方々にお勧めします、、

今回読んで気がついたことも多かった、

ネタバレになるので、書くまいとも思ったのだが、中学時代に読んで記憶していた1シーンの一つ、
臨終間際の母がいう「子どもって、ただ可愛がればいいのね」の台詞は、夫との間で交わされた言葉かと思っていたら、次郎の乳母との間で交わされた言葉だった、

次郎を連れ戻す母と奪われた乳母との間にあった一時のぎくしゃくとした感情が、一方の死を目前に氷解していく、その中での会話だった、

そうだったのか、

しかし、その会話が夫との間でなされたものか乳母との間でなされたものか、そのどちらにしても大きな違いはもたない、作品の質を落としはしない


※青空文庫 
ネットに接続し”青空文庫”で、検索してみてください、作家別索引の”し”の欄に、下村湖人氏があります、その中の次郎物語、、書店に出向かなくてもその場で読めます、ダウンロードすれば、ネットの接続を切ったあとでも、パソコンで読むことができます、
同様の方法で、さまざまな良書を読むことが可能です、、

2 件のコメント:

  1. 懐かしいな。中学の時に読んだ次郎物語。また読みたくなった。どこかに本があったはず・・

    返信削除
  2. iggy さん
    お久しぶりです。
    中学時代に読まれたとか、今、再度読むと、そのときとは違った印象や感想を
    もたれるかと思います。
    中学生のときには気がつかなかった作品の内容に、今なら気がつくのかもしれません。
    全5部を読むことはないかと思うのですが、1部だけなら、もう一度読まれても良いかもしれませんね。

    購入されなくても、青空文庫を検索し、ネットで読まれたらいかが?

    お正月は忙しいのかしら?
    1月2日は毎年恒例になってきた、将棋の会の新年会を我が家で開きます。
    個人戦やら紅白戦を、お酒を飲みながら楽しく指します。
    それ以外は、なんら予定は入っていません。

    返信削除