自分が匂いに敏感だと気が付いたのはいつのことだったろう、
ひとが苦手だというブルーチーズの匂いは気にならない、というか好きだし
弱火で炒めたガーリックの匂いも好き、
もちろん、太陽に干しあげた布団の匂いも好き、
苦手な匂いは、いつか書いたかもしれないが、海老の塩焼きのソレ、
海老に限らず蟹などの甲殻類に熱を加えたときの匂いが、臭いに感じられて
大の苦手、
不機嫌になり、やめてくれ、とマジメに訴えたくなる、
新潟は越後湯沢駅の構内で、イカの塩焼きを売っていたのだが、そっちも無理だったなあ、
タレ焼きはまだ我慢できるのだが、塩焼きになると、特に臭いが強調されるかのようで、
一刻も早くその場から逃げたくなる、
そしてもちろん息を止めて逃げる、、
地元成増で、ホームレスの年配の女性をみかけるようになって、数年が経つ、
年齢は60歳から70歳の間くらい、身長153cm、体重56kg(未確認)、
やや小太りの、人の良さそうな(これも未確認)彼女、
どんな事情があってホームレスになったのか、ぼくにはわからないのだが、やはり気になる、
大きなカートにおそらく全財産だと思われる衣類やら毛布やら洗面道具やら、貴重品も(たぶん)詰め込み、終日、駅入り口や階段下に座っている彼女、
日除けの傘を大きくさして、その中で一日中を過ごしているかのよう、
夏の暑い日も、冬の寒い日も、彼女をみかけない日はない、
スーパーのレジに並んでいる姿もたまに見かけるので、お金をまったく持っていないというわけではないのだろうが、彼女が、だんだん臭ってくるようになった、
駅に向かうエレベーターを開けると、すでに臭う、
見れば行き先の向こうに彼女が座っている、
免疫力のないぼくは、彼女に申し訳ないと思いつつ、息を止め足早に彼女の元から立ち去る努力をする、
初めてみかけた頃には、臭いもしなかった、
どうしてなんだろう、彼女自身は自分の臭いに気が付かないのだろうか、
近くには無料で使用可能なトイレも洗面所もある、
女性であるから、裸になって身体を拭くことは無理かもしれないが、トイレに入って、
ちょっと汗をぬぐうことはできるはず、、
以前、読んだ別のホームレス男性の手記に
「臭うようになったらもうダメなんです、復帰はできません。
臭わないように、こまめに身体を洗っています。いつか来るかもしれない復帰に
備えて」と、、
駅前には交番もあり、警察官も彼女を目撃している、
板橋区には当然、福祉の制度も完備し、相談員もいるはず、
なのに、衆人からは無視され、行政からも手をさしのべられてはいないかのようだ、
たまに行くレストランのママと彼女の話になった、
「彼女と同年配の女性が、エレベーターに乗り込もうとした彼女に
『アンタ、臭いから乗らないでよ』と、強く言ったのを目撃したわ、
わたしは、臭いから彼女が来れば乗り過ごすか、階段を使うけど、
同年配なのに、よく、そんなことを言えるわよねえ、
あたし、びっくりしちゃった」と、
今日もこれから、駅まで出かけていく、
臭いに弱いぼくは、今日も、足早に彼女の元を通り過ぎる、
どうしたの?と、声をかけられない自分が、ひどく弱い人間であることを自覚しながらも、声をかけたところで、応えを聞いたところで何もできないだろうことをわかっているぼくは、
その自分の弱さに、ますますイヤケがさしながら息を止めて通り過ぎる、、、
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