自分も歳を経ってきたので、友人たちも歳をとってきた、
もう三十年もつきあっている飲み仲間のひとりが、数ヶ月前から、脇腹が痛い脇腹が痛いと訴えていた、、
若い時には、一晩にバーボンのボトルを二本もあけるほどの酒豪だった彼、
会社を興し、それがうまく軌道に乗り、景気の良かった頃には一軒のスナックの支払いだけで月に70万円ほどだったとか、
銀座ではなく、ここ成増での毎月70万円を超える散財、どのくらい酒を浴びたのか想像ができるだろうか、、
あまりにも痛みが激しく、またある日、真っ黒な便が出たのがきっかけとなって、病院嫌いで通っている彼も国立埼玉病院へ診察を受けに行ったのだとか、
胃潰瘍か十二指腸潰瘍の疑いがあると、診察時に言われたのだが、その後の精密検査の結果、胃癌であることが判明した、、
かなり進行していて食道の方にまでその腫瘍範囲が拡がり、おそらく他の臓器にも転移があるでしょうとの診断、
入院し手術をすることになった、
その入院日が決まるのが明日、4月14日、
飲み仲間であり将棋仲間であり俳句仲間でもある彼、
温厚な人柄から誰からも好かれる彼、
どんなに酒を飲んでも声を荒げることなど一切なく、怒った顔を見せたことがない彼、
食道ばかりでなく一部リンパ節にも転移が認められると診断を受け、気落ちしているだろうと思って、お茶でもしようかと会ったのが、金曜日の昼、
「好きなことをしてきた結果なので、覚悟はできている、
死ぬことがこわくないといえば、それはわからないけど、これだけ酒を飲んできたのだから、まあ仕方が無いかな」
60歳にはまだ数年ある若い彼、
彼の母親はまだ健在で、彼のことが気ががり気がかりで、来なくていいからと言うのに診察のとき病院まできたらしい、
母親には二度ばかり会ったことがある、
穏やかで上品な老婦人だった、
この母親だからこそ、あの彼が育ったのだなあ、そのことが十分納得できた、、
年老いた母親よりも先にいくなよ、それが一番の親不孝だぞ、
そんなとりとめの無い繰り言に、ただ笑顔の彼だった、、、
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